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大阪高等裁判所 昭和36年(う)1406号 判決 1961年11月28日

被告人 浦野健二郎

主文

原判決を破棄する。被告人を懲役三月に処する。

この裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予する。

原審における訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

弁護人の控訴趣意第一点について、

所論は原判決は審判の請求を受けない事件について判決した違法がある。即ち本件起訴状には「大阪府議会議員選挙に際し……自己の当選を得る目的を以つて」とあるから、審判の範囲は右府議会議員選挙に限定さるべきであるのに拘らず、原判決は右起訴状記載の訴因に関し訴因変更訂正の申立がないのに「松原市長選挙若くは大阪府議会議員選挙のいづれかに立候補する意図を有し……右各選挙のうち、自己の立候補する選挙において自己の当選を得る目的で」と認定しており、明らかに審判の範囲を逸脱しているから破棄を免れないというのである。よつて調査するに、本件起訴状には「被告人は昭和三四年四月二三日施行の大阪府議会議員の選挙に際し、松原市地区より立候補したものであるが、自己の当選を得る目的をもつて」と記載されているが、原判決によれば、被告人が昭和三四年三月一五日施行の松原市長選挙若くは同年四月二三日施行の大阪府議会議員選挙のいづれかに立候補する意図を有し、右各選挙のうち自己の立候補する選挙において、自己の当選を得る目的をもつて原判示第一、第二の各饗応をしたことを認定したことが明らかである。しかしながら原判決が右の事実を認定するについて、何等訴因追加の手続をとらなかつたことは一件記録に徴し明らかであるから、原判決は検察官が単に被告人の大阪府議会議員選挙に関する違反事実を訴因としているのに、訴因追加の手続をとらないで被告人の松原市長選挙に関する違反事実をも審判し、処罰したことに帰着し刑事訴訟法第三七八条第三号後段の審判の請求を受けない事件について判決したこととなり破棄を免れない。論旨は理由がある。

(その余の判決理由は省略する。)

(裁判官 小田春雄 石原武夫 原田修)

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